このページでは、食レポの食感の語彙を増やす方法を扱います。足場にするのは、研究者が集めた日本語の食感の言葉の一覧です。445 語あり、そのうち 7 割が「サクサク」「もちもち」のようなオノマトペ(擬音語・擬態語)です。

445 語という数

農研機構の早川文代さんらは、食品の研究者や学生への質問紙調査、辞書や専門書、専門家への聞き取りを重ねて、日本語のテクスチャー(食感)用語を 445 語にまとめました。

日本語テクスチャー用語の最大の特徴は,445 語と数が多いことである.

出典: https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/60/7/60_311/_pdf(取得日: 2026-09-27)

同じ論文では、ほかの言語の用語リストと比べています。調べ方が違うので厳密な比較ではないと断ったうえで、中国語は 144 語、フランス語は 224 語、フィンランド語は 71 語でした。日本語は、食感を言い分ける言葉がもともと多い言語です。

7 割がオノマトペ

数が多い理由として挙げられているのが、オノマトペです。

テクスチャー用語 445 語のうち擬音語・擬態語は 312 語で,全体の 70.1%を占めていた.

出典: https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/60/7/60_311/_pdf(取得日: 2026-09-27)

オノマトペは、音を少し変えるだけで別の食感を言い分けられます。論文の一覧には「ぷるぷる」「ぷるんぷるん」「ぷにぷに」が別の語として並んでいます。粘りと弾力を表す言葉が特に多く、「ねばねば」「ねっとり」「ぬめり」や、「ぷ」「ぶ」で始まる弾力の言葉がたくさん見つかります。

食レポに引きつけると、「おいしい」の代わりに探す言葉は、日本語ではオノマトペがいちばん層が厚い、ということです。

全部は通じない。消費者に通じるのは 135 語

445 語の中には、専門家なら使うが一般には通じにくい言葉も入っています。早川さんらは首都圏と京阪神で 2,437 人分の回答を集め、それぞれの言葉を「食べ物の表現だと思うか」を尋ねました。75%を超える人が食べ物の表現だと答えた言葉は、135 語でした。

食レポで使うなら、まずこの 135 語に入る言葉から覚えるのが安全です。論文の表 1 には一語ごとの認知度が載っていて、たとえば「サクサク」は 0.99、「もちもち」は 0.98、「ほくほく」は 0.97 です。一方で「コキコキ」は 0.14、「ぐずぐず」は 0.18 で、聞いた人の多くには食べ物の話として届きません。

言葉は入れ替わる

1964 年の調査と比べると、よく使われる言葉は時代で変わっています。「つるつる」「こりこり」「パリパリ」は当時も今も上位です。「もちもち」「プチプチ」「こしがある」は新しく使われるようになった言葉で、「水気の多い」「かみやすい」「もろい」は使われなくなりつつあります。

語彙を増やすときは、辞書のように古い言葉まで全部覚えるより、いま通じる言葉を集めるほうが食レポには役立ちます。

語彙の増やし方

  1. 論文の表 1(認知度つきの一覧)を眺めて、認知度 0.9 以上の言葉から自分が普段使っていないものを 10 個選ぶ
  2. その言葉が合う食べ物を 1 つずつ思い浮かべる。「ほくほく」ならふかしたじゃがいも、「シャキシャキ」ならレタス
  3. 食レポの番組やグルメ記事で、プロがどの食べ物にどの言葉を当てているかをメモする

選んだ言葉は、前のページで紹介した「ひと噛み目・途中・飲み込むとき」のどこかに当てはめて使うと、変化まで言えます。「ひと噛み目はサクッ、途中からねっとり」のようにです。

言葉だけでは足りないときに効くのが、たとえです。それは次のページで扱います。